イチ 歓喜一瞬「そういうところが好きなところですね」

[ 2012年10月14日 06:00 ]

<ヤンキース・オリオールズ>3勝2敗でリーグ優勝決定シリーズ進出を決めたヤンキース・イチローはシャンパンをかけられ笑顔

ア・リーグ地区シリーズ第5戦 ヤンキース3―1オリオールズ

(10月12日 ニューヨーク)
 悲願の世界一に一歩近づいた。ヤンキースは12日(日本時間13日)、オリオールズとの地区シリーズ第5戦を3―1で制し、10年以来2年ぶりにリーグ優勝決定シリーズ進出を決めた。「2番・左翼」で先発したイチロー外野手(38)は、6回に中押し点となる右中間フェンス直撃の適時二塁打を放ち、勝利に貢献した。試合後は控えめなシャンパンファイトで喜びをかみしめ、早々に次戦へと気持ちを切り替えた。
【試合結果】

 歓喜の祝勝会。ジーターとカノから同時にシャンパンを頭に浴びせかけられたイチローは、思わず「オー!」と奇声を上げた。マリナーズ時代は無縁だったシャンパンファイトも、今年もう2度目だ。

 「最後まで苦しめられた。でも最後にこうやって締めることができた。本当に凄いチームでしたね。ボルティモア」。興奮の余韻が冷めやらぬ中、しみじみと激戦を振り返った。

 逆王手をかけられた大一番で、イチローが魅せた。1―0の6回1死一塁。初球を鮮やかに捉え、右中間フェンス直撃の適時二塁打で貴重な追加点を奪った。「しんどい日になることは想像していましたけれど、終わるイメージはしていなかった」。決して諦めない――。イチローらしい姿勢を貫き勝利に貢献した。

 同地区のオ軍とは今季レギュラーシーズンで9勝9敗。地区シリーズを終えて振り返っても、12勝11敗で得点はヤ軍の106点に対し、オ軍は102点。ほぼ互角の戦いを演じてきた。そんな難敵を下しての勝利だけに、喜びを爆発させてもおかしくはない。しかしそこは名門ヤンキース。リーグ優勝決定シリーズ進出を決めても、グラウンド上のナインが喜びを分かち合ったのはほんの数分だけ。他球団のようにベンチの控え選手らが一気にグラウンドに駆け出すようなシーンはなかった。

 世界一以外は認めないのがピンストライプの伝統。地区シリーズはあくまでも通過点というチームの振る舞いに、イチローは「そういうところが好きなところですね。精神的な次元が違う」と共感する。この日の祝勝会も3日の地区優勝時より数分短い約10分間で終了。自身も宴の終わりを待たずに早々に切り上げた。他球団が数百本用意するシャンパンも約120本と控えめだったことも、常勝軍団のあり方を物語っていた。

 13日(日本時間14日)からはさっそく本拠地でタイガース戦が始まる。「アメリカでは時間を空けずに進んでいくイメージ。そこは驚かない」。気持ちは既に新たな戦いへ。イチローが再び世界一に照準を定めた。

 ≪第5戦まで戦ったのは過去6度≫ワイルドカードが導入され現行の地区シリーズが始まった1995年以降、ヤ軍が第5戦まで戦ったのは過去6度。うちリーグ優勝決定シリーズへ進出したのは00年(世界一)と01年の2度で、ともにワールドシリーズ進出。また地区シリーズ全4カードが最終戦までもつれるのは今季が史上初。

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2012年10月14日のニュース