「忘れたらただのアホ」2発中田を燃えさせた苦い経験 (1/2ページ)

[ 2012年9月29日 06:00 ]

<日・西>初回2死一塁、2ランを放ちガッツポーズの日本ハム・中田

パ・リーグ 日本ハム5-0西武

(9月28日 札幌D)
 日本ハムが優勝に向けたマジックナンバー「4」を初点灯させた。2位・西武との直接対決となった28日、4番・中田翔内野手(23)が初回の先制22号2ランに続き、5回は23号3ラン。今季2度目の1試合2本塁打でチームの全5打点を叩き出した。投げては吉川光夫投手(24)が2安打完封で14勝目。投打の柱による共演でチームは貯金を今季最多の16とした。29日に連勝すればマジックは2。最短で30日にも、福岡で栗山英樹監督(51)が宙に舞う。

 初回に先制弾を放った直後の2回だった。左翼の守備位置に向かう中田が、声援に応えて両手を高々と突き上げた。ここまで喜びを表現したのは今季初めてだ。札幌ドームの空気は一変。主砲が自らのバット、そしてパフォーマンスでチームをVモードにした。

 「ファンと一緒に喜びを分かち合いたかったからね。(ガッツポーズは)自然と出たよ」

 交流戦の6月18日、DeNA戦(横浜)以来となる今季2度目の1試合2発で西武を沈めた。2本とも「完璧な手応えだった」と自画自賛するアーチ。初回2死一塁で直球を左中間スタンドに運び、のどから手が出るほど欲しかった先制点を奪った。21日の直接対決では同じ野上相手に2点先制しながら、追加点が奪えず逆転負け。だが5回2死一、三塁で今度は左翼中段まで運ぶ125メートル弾で3点追加し試合を決めた。「2点では足りないと思っていた。油断することなく集中できた」

 これぞ4番の働き。今季は開幕から不振続きだったが、一度も外すことなく全試合に4番で起用し続けている栗山監督は「こういう打撃ができる選手だから4番を打たせてきた。現役時代の栗山英樹が5倍、10倍努力しても同じスイングスピードにはできない。中田は天賦の才を持っている」。いまだ打率は・237でリーグ26位に低迷しているが、勝利打点17はリーグトップ。優勝争いが佳境に入った9月の6本塁打、19打点もリーグトップの数字。「チームの勝ち、負け、すべてを背負うのが4番の仕事」と話す指揮官の理想の4番像に向け、一歩ずつ着実に成長している。

 前回優勝の09年。当時2年目だった中田は、胴上げ2日前に不振を理由に2軍へ降格させられた。悔しさと自分への腹立たしさから、千葉・鎌ケ谷の寮では優勝の瞬間をテレビで見ることもなかった。「あの悔しさ?忘れるはずがない。忘れたらただのアホ。その悔しさがあって今までやってきた。だからこそ優勝というものを味わってみたい」と振り返る。

 混戦の続いたパ・リーグで初めてマジックを点灯させた。栗山監督は「出ないよりは出た方がいいけど、あと5試合で4でしょ?残り試合全部勝たなくてはいけないみたいで、めちゃくちゃ怖いね」と話したが、最短で30日にも3年ぶりのリーグ優勝が決まる。ゴールは見えた。あとはこのまま一気に走り抜けるだけ。その先頭に23歳の主砲がいる。

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2012年9月29日のニュース