メジャー球に慣れたダル スプリット解禁13勝「楽しめた」

[ 2012年8月30日 06:00 ]

<レンジャーズ・レイズ>完璧な投球で球団新人記録更新となる13勝目を挙げたレンジャーズ・ダルビッシュ

ア・リーグ レンジャーズ1―0レイズ

(8月28日 アーリントン)
 レンジャーズのダルビッシュ有投手(26)が28日(日本時間29日)、レイズ戦で11日ぶりに先発し、7回を6安打無失点で13勝目を挙げた。これまであまり使ってこなかったスプリットを決め球に多用し、10奪三振。今季8度目の2桁奪三振は両リーグトップとなった。プレーオフに向けて新たな引き出しをつくると同時に、レッドソックス・松坂が07年に記録した日本投手の大リーグ1年目の最多勝利15勝にもあと2勝に迫った。

 よほど手応えがあったのだろう。6回2死。ダルビッシュは外角低めに鋭く落としたスプリットで選球眼のいいペーニャから空振り三振を奪うと、右手で胸を軽くポンと叩き右手人さし指を上に向けた。

 「制球も球威も凄く良かった。点差を考えずに、ただ目の前の打者との勝負を楽しめた」

 右太腿の張りで23日のツインズ戦を回避。中10日の登板間隔が空いたが、2回無死二、三塁、4回無死一、二塁のピンチを切り抜けてエンジンがかかると、もう独り舞台だった。

 最大の武器となったのが6三振を奪ったスプリットだ。日本ハム時代から持っている球種で、140キロ台中盤のスピードで直球のような軌道から打者の手前で鋭く落ちる。空振りを奪うのに効果的だが、一方で人さし指と中指で挟んで手首を固定して投げるため、握力が低下するとすっぽ抜ける危険性がある。滑るといわれるメジャー公式球では制球がより難しく、レッドソックス・松坂も1年目のシーズンには封印する時期もあった。そんな理由に加え、カーブ、スライダーに決め球としての手応えを感じていただけに、ダルビッシュはこれまで多投することはなかった。それでも、常に新たな投球スタイルを模索し続ける右腕。5~7回はスプリット中心で2つずつ三振を奪った。シーズン終盤に来て「新魔球」ができたことは、プレーオフに向けて大きなアドバンテージになり得る。

 スプリットに限らず、この日は低めへの制球力と速球の球威が光った。「きのういろいろ考え、それがしっかりできて球威が戻った」とダルビッシュ。詳細については語ろうとしなかったが、体重移動がスムーズになった投球フォームも大きな要因だ。12日のタイガース戦から右膝を曲げて重心を軸足に乗せやすくし、背中を丸めて前かがみになって立つようなセットポジションに変えた。アンディ・ホーキンズ・ブルペンコーチは「あまり真っすぐ立つと、自然と勢いをつけようとして体の反り、開きが早くなる。体の開きを抑えられればリリースポイントも安定する」と説明。

 また目線まで高くしたグラブ位置は、この日は若干下げたが、同コーチは「グラブを体の正面に構えることで軸が安定する」とした。

 1試合で奪った空振りは今季最多の21回。四球の数も2個だけだった。シーズン8度目の2桁奪三振はレ軍では過去にノーラン・ライアン球団社長しか記録していない。それでも「満足はしない。いいのが当たり前ではないと」。自らに課すハードルは高い。

 ▽スプリット 正しくはスプリット・フィンガー・ファストボールと呼ばれ、直球と似た軌道および球速で縦に落ちる。人さし指と中指の間で深く握るフォークに対し、浅く握るのが特徴。ボールの回転がフォークよりも多いために球速は速いが、変化の落差はフォークより小さい。一方で、より打者の近くで変化する。

続きを表示

2012年8月30日のニュース