父の教え胸に怪物支え続けた女房役 1球もそらさず

[ 2012年8月21日 06:00 ]

<桐光学園・光星学院>4強入りならず、宇川(右)に抱えられながら号泣する松井

第94回全国高校野球選手権大会準々決勝 桐光学園0-3光星学院

(8月20日 甲子園)
 天国の父も誇らしげだったはずだ。無念のゲームセット。泣き崩れる怪物左腕・松井を抱きかかえて宇川は言った。

 「最後までしっかりやろう」。寄り添うようにして三塁アルプス席の前へ。万雷の拍手。宇川はどこまでも松井を支える捕手であり続けた。

 「甲子園は夢の中にいる気分でした。最高の舞台で、幸せだった」

 小学生時代に捕手を薦めてくれた父・幸次さんが他界(享年51)したのは昨年4月。「捕手は一人だけ逆を向いてチームを支えるんだ」。池田少年野球部監督だった父の教えは忘れない。父子の夢だった甲子園で、ひたすら松井を支えた。

 昨秋、松井のスライダーを捕れずに捕手を外された。至近距離から打ったテニスボールを捕球する練習を繰り返し、捕手に復帰。スライダーを体を張って止め、1球もそらさなかった。8回のピンチでは、マウンドで松井の顔をペチペチッと叩いた。2人だけに分かるリラックスの合図だ。右腕には、ワンバウンドしたスライダーを止めた痕が赤く残っていた。

 「父も見守ってくれていた。親孝行ができたと思います」。最後に、号泣するエースへこう言った。「ありがとう」。

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2012年8月21日のニュース