「手元で消えた」…桐光・松井 縦スライダー10連続!22K

[ 2012年8月10日 06:00 ]

<桐光学園・今治西>桐光学園2年生エースの松井は初の甲子園登板で22奪三振の大会記録を達成する

第94回全国高校野球選手権1回戦 桐光学園7―0今治西

(8月9日 甲子園)
 聖地に新怪物が現れた!桐光学園(神奈川)のエース左腕・松井裕樹投手(2年)が、今治西(愛媛)戦で衝撃の奪三振ショーを演じた。縦のスライダーを自在に操り、ともに春夏通じて甲子園記録となる22奪三振、10連続奪三振をマーク。2安打完封勝利を飾り、打撃でも5回に公式戦初となる右越え3ランを放った。ネット裏に集結したプロのスカウトからは、早くも来秋ドラフトの1位候補の声が上がった。

 どよめく甲子園のスタンドとマウンドでは、あまりにも温度差があった。9回2死、松井が投じた139球目はカーブ。狙い通り27個目のアウトを22個目の三振で奪ったが、左手でグラブを2度軽く叩いただけだった。

 「いい投球ができて良かった。記録をつくってしまったので、次からはそのプレッシャーに負けないようにしたいです」。衝撃の甲子園デビューを果たした2年生左腕はそう言ってはにかんだ。

 初回から三振の山を築いた。5回まで11個。6回無死一塁から初安打を許したが「途中まで(ノーヒットを)意識していたけど、切り替えました」。再びスイッチが入る。6回1死からは圧巻の10者連続。大会記録の8者連続を86年ぶりに塗り替えた。7回以降のアウトは全て三振。大阪桐蔭の辻内(現巨人)ら5人が記録した19奪三振を上回り、22まで伸ばした。

 憧れの投手でもある巨人・杉内のようなゆったりしたフォームから最速147キロを誇るが、最大の武器は120キロ台前半、後半の2種類のスライダー。1年春。カウント球で使うために投げ始め、握りを何種類も試した。そこでスライダーの魅力に気付いた。追い求めたのは縦の変化。高めのボールゾーン付近から変化し、地面に着くほどの落差がある。4三振を喫した今治西の4番・末広は「直球だと思って打ちにいったら手元で消えた」と目を丸くした。

 中学時代に日本一を経験した逸材だが、1年時は下半身が弱く、右足を一塁方向にインステップしないとバランスを取れなかった。走り込みと20球1セットの試合を想定した計200球の投げ込み。ひと冬を越えた松井のステップは、本塁方向へ真っすぐに踏み出せるようになっていた。

 今夏の神奈川大会では46回1/3で68個の三振を奪った。この日はカーブ、スライダーを合わせて67球投じ、バットに当てられたのは9度だけ。公式戦初本塁打のおまけも付いた松井は「(三振記録の)歴史に恥じないよう、次もしっかり調整したいです」と言った。

 73年春。元祖怪物と言われた作新学院の江川卓は、同じ今治西戦で1試合20奪三振、8連続三振をマークしたが、松井はその記録をいずれも上回った。まだ2年生。新たな怪物伝説が幕を開けた。

 ▼桐光学園・野呂雅之監督 松井には四死球を出してもいいからミットめがけて全力でいきなさいと言っていた。

 ◆松井 裕樹(まつい・ゆうき)1995年(平7)10月30日、神奈川県生まれの16歳。小2から元石川サンダーボルトで野球を始め、山内中では青葉緑東シニアに所属し3年時に全国大会優勝。桐光学園では1年春からベンチ入りし、同年秋からエース。遠投105メートル、50メートルは7秒0。握力は右51キロ、左53キロ。1メートル74、74キロ。左投げ左打ち。

 ≪大会通算最多奪三振は板東英二の83≫桐光学園・松井が毎回の22奪三振。05年大阪桐蔭・辻内ら5人がマークした夏の1試合最多奪三振記録19を大きく更新した(延長戦の最多は25)。63年PL学園・戸田が持つ春の最多記録21も上回り、春夏を通じて甲子園新記録となった。6回から9回にかけて10者連続奪三振。こちらも26年和歌山中・小川正太郎の8者連続を上回る新記録(春の最多も8)。大会通算最多奪三振は58年徳島商・板東英二の83。松井はどこまで迫れるか。

 ≪奪三振あらかると≫

 ☆プロ野球 9イニングの最多奪三振は19。野田浩司(オ)が95年4月21日ロッテ戦でマーク。延長戦では亀田忠(イーグルス)が38年9月16日巨人戦の延長14回までに奪った20。連続奪三振は梶本隆夫(阪急)が57年7月23日南海戦、土橋正幸(東映)が58年5月31日西鉄戦で記録した9連続。

 ☆主な大学 東京六大学の1試合最多は秋山登(明大)が54年春の東大1回戦で記録した22。最多連続は大木勝年(早大)が70年秋の東大2回戦、長田秀一郎(慶大)が02年春の東大2回戦でマークした9連続。東都大学の1試合最多奪三振は門奈哲寛(日大)が92年秋の国学院大1回戦、堤内健(日大)が02年秋の専大1回戦で奪った18。

 ☆大リーグ 9イニングの最多は20。ロジャー・クレメンス(レッドソックス)が2度(86、96年)、ケリー・ウッド(カブス)が98年、ランディ・ジョンソン(ダイヤモンドバックス)が01年に記録している。また、連続は10が最多で、トム・シーバー(メッツ)が70年に記録した。

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