イチ凱旋 日本での開幕戦に「生涯一度あるかないか」

[ 2012年3月24日 06:00 ]

メジャーリーグ開幕戦のため日本に帰国したイチロー

 イチロー外野手(38)らが所属するマリナーズとアスレチックスは東京ドームで行われる今季開幕シリーズ(28、29日)に備えて23日、成田空港着のチャーター機で来日した。イチローにとって日本で開幕戦を迎えるのは、オリックス時代の00年以来12年ぶり。03年に当初予定されていた日本での開幕戦がイラク情勢の悪化で直前になって中止。日本が生んだ世界のイチローが、紆余(うよ)曲折を経て、愛する母国でメジャー12年目のスタートを切る。

 イチローが静かに日本の地を踏んだ。紺色の帽子にスーツ。ピンクとグレーのストライプ柄のネクタイに、シャツも同配色のチェック柄といういで立ち。足首を5センチほどのぞかせる着こなしが憎らしい。午後6時18分、混乱を避けるようにチームの誰よりも先に到着ロビーに姿を現すと、独特のオーラに待ち構えた約150人のファンは息をのんで見送った。

 「僕たちはこれまで、こういう機会に恵まれなかったから、僕にとってもチームにとっても新しいこと。生涯で一度あるかないか。だから僕は楽しみたいと思う」

 来日前、大リーグ公式サイトの取材にそう答えたイチロー。特別な思いを込めるには理由がある。マ軍3年目だった03年、当初予定されていたアスレチックスとの日本開幕戦が、イラク情勢悪化のため来日直前に中止となった。当時は29歳で「自分たちに何ができるというものではない」と吐露した。02年11月に日米野球の大リーグ選抜として出場しているとはいえ「マリナーズ・イチロー」としての凱旋は悲願だった。ピンクフレームの眼鏡の奥には、決意に満ちた目が輝いていた。

 日本で迎える今季は新たなスタートとなる。昨季は年間200安打が11年目にしてストップ。今季は30球団最低の得点力を補うべく、エリク・ウェッジ監督から3番打者に指名された。キャンプでは右足の上げ方など打撃フォームを試行錯誤。来日直前の2試合は2戦連発で締めるなど、打率・400とトップパフォーマンスを見せられる土台をつくり上げてきた。

 イチローの思いはもう一つの行動につながった。日本開幕戦は東日本大震災の復興支援イベントの位置づけでもある。大リーグは27日にマ軍、ア軍の選手らが講師となり、震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市で野球教室を開催すると発表。教室終了後は仮設住宅で生活する人々に豚汁などを振る舞う。関係者によれば「イチロー選手は継続的な支援と、人との触れ合いなどを機構に訴えてきた」と話す。昨年1億円の義援金を送ったイチローだが、被災地への支援の思いは色あせることはない。開幕前日のイベントで自ら足を運ぶことは難しいが野球道具の寄付など、できる限りの支援を行うもようだ。

 到着直後にチーム関係者に「思ったよりも早く着いたね」と話したイチロー。開幕戦まであと4日。グラウンド内外で、大リーグ、そしてマリナーズの「顔」としての1週間が始まった。

 ▽大リーグのオフの支援活動 日米両政府が主導する「トモダチ作戦」の一環として、在日米大使館は昨年11月8日に大リーグと同選手会が石巻市の野球場修復や被災地の少年野球チームへの野球道具の提供を行うと発表。同12日には石巻市での野球教室に斎藤(現ダイヤモンドバックス)が参加した。また、2632試合連続出場の大リーグ記録を持つカル・リプケン氏が親善大使として同時期に来日し、岩手県大船渡市など全国各地で野球教室を行った。

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2012年3月24日のニュース