牧田 “常識破り”の「弓を引く」超速クイック

[ 2012年2月18日 09:00 ]

球界トップクラスの“超速クイック”を誇る牧田

 下から超速クイック――。昨季は新人ながら先発、抑えにフル回転して新人王に輝いた西武・牧田和久投手(27)は、下手投げながらクイックのタイムが球界トップクラスだ。学生時代からの試行錯誤を経て、昨年3月に現在のフォームが完成。今季は先発に再転向する右腕の、「下手投げは走られる」という常識を覆す驚異のクイックの秘密とは?

 走者を塁にくぎ付けにするには、けん制だけでは足りない。牧田のクイックは、始動から捕手が捕球するまで平均1・1秒。この日のブルペン投球での最速は1・03秒だった。これは投手陣が目標とする1・2秒以内を大きく下回る。

 牧田は「昔はよく盗塁された」と振り返る。下手投げは上手投げに比べて上半身の力を利用できないため、セットポジションから始動する際は一度右足に体重を乗せ、ワインドアップ同様に大きなテークバックを取らなければ著しく球威が落ちる。高校、社会人時代は右足に体重をかける一瞬が走者への隙となり、盗塁を許す要因となった。

 プロ入り後も悩み続けたが、昨季開幕直前の3月に「セットポジションを、少しでも投げる体勢に近づけよう」と思いつく。両足の間隔を肩幅から倍の約1メートルに広げ、膝も曲げた。あらかじめ右足に全体重を乗せる意識があり、始動時に体を1ミリも右側に動かさずに上半身を沈み込ませ、左足を踏み出して投球。高校から重点的に鍛えていた下半身とリストの強さで球威も維持し、驚速クイックを手にした。「弓矢で言えば弓を引いて、あとは手を離すだけという状態です」と言う。

 昨季、牧田は127回2/3で盗塁を企画されたのはわずか2回。クイックが巧みな涌井でも178回1/3で19回、岸も135回で15回だった。海面下に潜ったサブマリンは、誰よりも早く浮上する。

 ▼西武・渡辺監督 クイックは1・3秒台は遅く、1・2秒台が普通、1・1秒台なら速い。牧田はそれ以下で投げることができる。武器だよね。

 ▼西武・河田外野守備走塁コーチ 盗塁の目標タイムは3・25秒。捕手の捕球から二塁送球が早くて1・8秒だから、クイックが1秒ちょっとの牧田が相手だと、極端に言えば始動する前に走らないとセーフにならない。

 ▼西武炭谷 牧田さんのクイックは捕手からすると本当に助かる。よっぽど二塁送球がそれない限り盗塁は刺せる。

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