畠山の低重心打法は「球がみえやすく体がぶれない」

[ 2012年2月10日 06:00 ]

高く足を上げ、投手の動きを観察する独特のフォームのヤクルト・畠山

 打球は遠くに高く飛ばすが、腰は低い。ヤクルト・畠山和洋内野手(29)が、3年前に完成した独自打法で本塁打王に挑む。昨季はセ・リーグ日本人最高の23本塁打をマーク。プロ入り11年目にしてついにブレークした。1メートル80、96キロの体を低くかがめ、右足に負荷がかかるのを覚悟して大きく左足を上げる。なぜ、あえてその形に取り組むのか。そこに畠山の打法の極意があった。

 フォームを見れば一目瞭然だ。低い重心から、左足を腰の辺りまで高く、大きく上げて捕手方向に引く。同時に体も引く。そしてインパクトと同時に、力を解放するように一気に踏み出す。

 「足を上げるのは集中できるからです。その間に何の球が来るかも考える。重心を低くするのは球が見えやすくなるから。あとはフォームを安定させるため」。左足を高く上げ、右足で立つ時間を少しでも長く。球界ではノーステップやすり足が主流となる中で、あえて間をとる。18・44メートルを挟んだ投手との戦い。0秒台の思考の中で集中力を高め、投手のわずかな動きを見極めるのだ。

 昨季31本で本塁打王の同僚・バレンティンが左足を上げている時間は0・4秒。畠山は1・2秒ほどと3倍近い。加えて重心の低さ。ボールの軌道と目線の高さを近づければ変化球にも対応しやすい。正確にミートもできる。「いろいろ考え、ようやく3年前にこの形になりました」。苦心の末の完成作品だった。

 巨漢の畠山にとって、右足に大きな負荷がかかるスタイル。「右太腿の前側部分は張りますね。でもこの打撃じゃないと打てない。すり足打法とかダメなんです」。佐藤打撃コーチは「バレンティンは体がぶれる。畠山は安定している。これが違い」と説明。中村コンディショニング・コーディネーターは「スタッフ全員、彼の股関節は他の選手以上に柔らかくするという意識があります」と話した。

 「あんなフォームを見たことがない。俺だったら絶対右膝を悪くする」とバレンティン。その言葉に、畠山の打法の凄さが凝縮されている。

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2012年2月10日のニュース