【10大ニュース1位】復興へのプレーボール 楽天・嶋 決勝弾も迷い消えず

[ 2011年12月30日 10:42 ]

4月12日、ロッテとの開幕戦で決勝3ランを放った楽天・嶋

 ドラマのような劇的な勝利以上に、ダイヤモンドを回る嶋の表情が印象深い。

 予定より18日遅れた4月12日のロッテとの開幕戦(QVCマリン)。7回に決勝3ランを放ったのは、後に本拠地Kスタ宮城で「見せましょう、野球の力を」と名スピーチを行った楽天の選手会長・嶋基宏捕手(27)だった。

 笑顔を見せることなく右手を天に突き上げた。スタンドやベンチが総立ちとなる中、一人だけ硬い表情を崩さなかった。

 震災が起こってから嶋の口数は極端に減った。遠征生活が続く中、各地で毎日のように報道陣から被災地へのメッセージを求められた。「適切な言葉なんて見つからないです。それに、僕らも被災しているのにメッセージと言われても…」。選手会長として主将の鉄平らと深夜まで話し合った。被災地のことを真剣に考えているからこそ、安易に励ましの言葉をかけることはできなかった。

 震災直後から被災地に直接足を運んで支援したい気持ちを伝えたが、首脳陣やフロントの承諾は得られなかった。楽天と同じく仙台を本拠地にするJリーグのベガルタ仙台やbjリーグの89ERSは、震災後すぐに被災地を訪問。「東北の方はずっと温かく応援してくれた。それなのに困っている時に助けられないなんて…」。帰りたくても帰れないジレンマに悩まされた。

 シーズンが開幕しても、嶋の迷いは消えていなかったように見える。野球以上に優先すべきことがあるのではないか。一方、野球の力も感じたはずだ。復興の道のりは長くて険しい。開幕を迎えただけで安心していられない。試合後の会見でも最後まで笑顔を見せなかったのは、責任と重圧が増したことを感じたからだろう。

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2011年12月30日のニュース