巨人激震清武の乱!「江川ヘッド」めぐり渡辺会長に反旗

[ 2011年11月12日 06:00 ]

悔しさからか会見中に涙をため唇をかむ巨人・清武球団代表兼GM

巨人・清武球団代表 渡辺球団会長批判

 巨人の清武英利球団代表兼ゼネラルマネジャー(GM=61)が11日、都内の文部科学省記者クラブで緊急会見し、渡辺恒雄球団会長(85)を痛烈に批判した。同会長が来季ヘッドコーチ人事で既定路線とは違う江川卓氏(56)を推したことで、「プロ野球の私物化」と糾弾。企業コンプライアンスの観点から同会長を「内部告発」した。球団幹部が読売グループ内で絶対的な存在である同会長に公然と反旗を翻す異例の事態。球界の盟主である名門球団で表面化した確執は、球界自体を揺るがしかねない。

 用意していた声明文をよどみなく読み上げていた清武代表が、「巨人やファンを愛している」と言葉を詰まらせると、ついに感情が抑えきれなくなり、ハンカチで目頭を押さえた。

 午後2時すぎ。「極めて重要な問題」として緊急会見が始まった。弁護士を伴い、黒いスーツにネクタイ姿の同代表は「選手やコーチの基本的人権をないがしろにし、ファンを裏切る暴挙。(私が)愛する巨人軍を、プロ野球を私物化するような行為を許せない」と、渡辺会長を痛烈に批判した。

 「不当な鶴の一声」――。発端は9日だった。同代表によると、岡崎郁ヘッドコーチの留任をはじめすでに来季の全コーチの陣容が固まり、10月20日に渡辺会長の了解も得ていた。その中で、今月9日に同会長から一方的に「ヘッドは江川卓氏とし、交渉も始めている。(就任は)99・9%の確率」と通告されたという。当初了承したはずの人事方針が突然転換されたことで、清武代表はその場で同会長に翻意を求めたが聞き入れられなかった。そればかりか、4日に同会長が「俺に報告なしに勝手にコーチ人事をいじってる」とした発言に、「(酒に)酔った上で事実に反する発言をすることは経営者として許されない」と糾弾。会見では「(桃井)オーナー兼代表取締役社長を飛び越えて鶴の一声で覆した。会社の内部統制に大きく反する行為。球団はいったい誰のものなのか。やり方を改めてもらいたいし、正しい道に戻したい」と切々と訴えた。

 清武代表は明大・一場(現ヤクルト)への不正スカウト問題で渡辺会長(当時はオーナー)を含む球団幹部が一新された04年8月から球団代表に就任。だが、渡辺会長はオーナーを引責辞任後も絶対的な発言力を持ち続け、清武代表も「最高権力者」と表現していた。球団内ばかりか、1リーグ制など球界再編をも推し進めた「球界の首領」ともいえる渡辺会長に反旗を翻し、「覚悟を持って話さなければ、物事は変わらない」と語気を強めた。

 また、同代表は7日に新たな人事の内示を受けていたことも暴露。桃井恒和オーナーがオーナー職を外れ、自身は「専務取締役球団代表・オーナー代行・GM兼編成本部長」から「専務取締役球団代表・オーナー代行兼総務本部長コンプライアンス担当」に。事実上、編成トップから「解任」されたが、9日には渡辺会長から「1、2年後に君を社長にする。今後、君の定年は68歳まで延びる可能性もある」とも言われたという。

 報道陣との質疑応答でも渡辺会長への義憤を繰り返すと同時に、会見前には携帯電話で渡辺会長に今回のコーチ人事に対してあらためて翻意を促したことも明かした。同会長への辞任要求については「今後の対応を見てとなると思います」。一方で自らの辞任については否定した。

 歴史ある名門球団の動揺。プロ野球ファン全体に大きな不信感を与えることにもなりかねず、今後も波紋が広がることは必至だ。

 ◆清武 英利(きよたけ・ひでとし)1950年(昭25)10月12日、宮崎県生まれの61歳。宮崎南―立命大経済学部卒。75年に読売新聞社入社。読売新聞東京中部本社(現中部支社)社会部長、東京本社編集委員、東京本社編集局運動部長などを経て、04年8月に読売巨人軍取締役球団代表・編成本部長に就任。11年6月からオーナー代行、球団史上初めて新設されたゼネラルマネジャー(GM)職を兼務。

続きを表示

2011年11月12日のニュース