八幡商・遠藤 逆転満塁弾!強豪・帝京から大金星

[ 2011年8月14日 06:00 ]

<八幡商・帝京>奇跡のグランドスラム!!9回1死満塁、好投していた帝京・渡辺(左)から遠藤(中央)が逆転弾!!

第93回全国高校野球選手権大会2回戦 八幡商5―3帝京

(8月13日 甲子園)
 ミラクル進撃だ。八幡商(滋賀)は3点を追う9回に1点を返すと、遠藤和哉外野手(3年)が右翼ポール際へ逆転満塁弾を放ち、優勝候補の一角、帝京(東東京)を倒した。1回戦の山梨学院大付戦でも白石智英内野手(3年)が満塁弾を放っており、同一チームの1大会満塁本塁打2発は大会史上初の快挙。16日の3回戦では、62年のセンバツで延長18回0―0の引き分け再試合の激闘を演じた作新学院(栃木)と対戦する。

 今大会初の満員となる4万7000人の大観衆は一瞬、静まりかえった。3点を追う9回、1点を返し、なお1死満塁。5番・遠藤の打球は右翼方向に高く舞い上がる。そしてポール際に吸い込まれた。自身通算8本目の本塁打は、なんと逆転グランドスラム。ベンチでは投手の吉中や2番打者の竹井が泣いていた。

 「今までの野球人生で一番うれしかった。少し雰囲気を味わいたかった」。ヒーローは大歓声の中、ゆっくりとダイヤモンドを回った。

 まさにミラクル。帝京の左腕・渡辺の前に8回までは2安打で、二塁すら踏めない。池川準人監督でさえ「8回まで予感はなかった」と諦めかけた。しかし、9回1死から1番・高森からの3連打で満塁。相手の失策で1点を返すと、甲子園の雰囲気は一変した。遠藤には余裕があった。「チャンスに回ってきた方が楽しい」。フルカウントからの9球目。それまで変化球でストライクが入ったのは1球だけで「最後は絶対に直球」と見抜いた。そして外角高めの直球を振り抜いた。

 1回戦の山梨学院大付戦でも主将の白石が満塁弾。同一大会で1チーム2本の満塁本塁打は史上初めてだ。昨夏の滋賀大会では初戦で敗退したチームが、優勝候補の帝京を倒し、同校初の夏2勝をつかみ取った。

 池川監督は試合前のミーティングでゲキを飛ばした。「滋賀県の高校は東京に勝ったことがないから、歴史に名を刻もう!」。1回戦を突破すると、9日には近江八幡市の母校グラウンドに帰って練習を再開。帝京の投手陣を想定し、最後は300回の素振りで締めた。試合前に整列した時、体格差を感じた選手たちは思わず「でかっ!」と叫んだが、指揮官は「野球は体でするものじゃない」と落ち着かせ、ナインはその期待に応えた。

 次の相手は、62年のセンバツ準々決勝で0―0の延長18回引き分け再試合の末に敗れた作新学院。2試合連続満塁弾での勝利に、遠藤は「次は無理です」と笑ったが、3人目のミラクルボーイが出ても不思議ではない。

 ≪同一大会満塁2本は夏の大会初≫八幡商・遠藤が帝京戦の9回に満塁本塁打。今大会3本目、夏通算38本目。八幡商は山梨学院大付との1回戦でも白石が満塁本塁打。夏の甲子園で満塁本塁打を通算2本記録している高校は県岐阜商(36、71年)報徳学園(66、81年)高知商(73、83年)帝京(89年、91年)佐賀商(94、97年)に次いで6校目だが、同じ大会で2本打ったのは初めて。なおセンバツでは唯一、今年の東海大相模が準決勝だけで2本記録している。

 ◆遠藤 和哉(えんどう・かずや)1993年(平5)6月9日生まれ。小1から野球を始め投手。瀬田北中軟式野球部ではエースとして、2年夏の全国大会8強入り。八幡商では1年秋から背番号11でベンチ入りし、2年秋から外野手のレギュラー。高校通算8本塁打。50メートル走6秒0、遠投100メートル。1メートル80、78キロ。右投げ右打ち。

 ≪甲子園の9回大逆転≫

 ☆29年春準々決勝・八尾中6―5海草中 14歳エースの稲若率いる初出場の八尾中が0―5の9回に一挙6点を奪って4強。9回の5点差逆転は現在も春夏通じ最多。

 ☆04年春準々決勝・済美7―6東北 済美は2―6の9回に2点を返し、2死一、二塁から高橋が逆転サヨナラ3ラン。東北のエース・ダルビッシュは疲労のため左翼守備でサヨナラ弾を見送った。

 ☆06年夏準々決勝・智弁和歌山13―12帝京 智弁和歌山は4点リードの9回に8失点し8―12とされるもその裏、橋本の3ランなどで同点とし、最後は押し出し四球で5点を奪ってのサヨナラ勝ち。両チーム7本塁打は大会新記録。

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2011年8月14日のニュース