古川工 不屈の魂見せた!山田完投、粘りの4点

[ 2011年8月9日 06:00 ]

<古川工・唐津商>号泣する古川工・山田(右)に背中をたたき、共に引き揚げる間橋監督

第93回全国高校野球選手権大会1回戦 古川工4-9唐津商

(8月8日 甲子園)
 簡単には諦めない。2回までに7安打9失点。それでも古川工エース山田の闘争心は消えなかった。3回以降は2安打無失点。133球。最後までマウンドを守り抜いた。

 「そういう(被災地を背負う)思いがあって力が入りすぎた。甲子園のマウンドは凄くいい場所だったけど、凄く苦しい場所でもあった。点差は離されても粘り強くプレーした姿が、少しでも勇気となって伝わればうれしい」。魂を込めた熱投。諦めず、一歩一歩、最後まで。復興を目指す被災地へ向けた、これ以上ないエールだった。

 山田はバットでも4回2死満塁で、詰まりながらも中前へ落とす執念の2点打。5、7回には今野主将が打点を挙げ、毎回の13三振を喫しながら最速152キロ右腕の北方悠に最後まで食い下がった。自身を産んだ直後から、現在まで入院生活を送る母・栄子さんへの思いも胸に戦った今野は「お母さんも一生懸命産んでくれた。今は話せる状態じゃないけど、心の中で応援してくれていたと思う」と涙をぬぐった。

 3月11日。東日本大震災で同校がある大崎市は最大震度7を記録し、グラウンドの照明1基が倒壊。地面にも複数の亀裂が入った。苦難を乗り越えての甲子園。今春のセンバツに出場した東北の上村主将からは「俺らの分も頑張ってくれ」とのメッセージを託された。「最後まで諦めないで食らいついてくれた。満足してます」と間橋康生監督。古川工ナインが銀傘に響かせた球音は、勇気の音色となって宮城県民の心に届いたに違いない。

 ≪27年前の応援団長「感動」≫古川工の一塁側アルプス席では、27年前に同校で応援団長を務めた深町健二さん(46)が感慨深げに観戦した。一時、応援団はなくなったが2年前に復活。これまで特別指導を行ってきた。勤務するクリーニング会社の石巻工場は津波で浸水。30人の従業員が解雇された。「悲しいことがあったからこそ、野球と応援でみんなが一体になるのは大事。諦めない姿に感動した」とナインに拍手を送っていた。

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