気仙沼は惜敗も小野寺 完投&希望のアーチ

[ 2011年7月16日 06:00 ]

<気仙沼・一迫商>エース小野寺(背番1)の本塁打に喜びを爆発させる気仙沼ベンチ

宮城大会3回戦 気仙沼1-2一迫商

(7月15日 東北福祉大)
 気仙沼のエースで4番の小野寺が、津波で壊滅的な被害を受けた地元・気仙沼市のすべての被災者に届ける希望アーチを架けた。2点を追う6回だ。1ボールから高めの直球を左翼席に運んだ。

 「無我夢中でバットを振った。みんなの思いが打球に乗ったのかな」

 終わってみればこの1点だけ。あと1点が届かずに敗れはしたが、自身公式戦初本塁打で意地の1点をスコアボードに記し、大黒柱としての存在感は見せつけた。

 小野寺の自宅は同市中心部を流れる大川から約300メートルの場所にある。津波で祖父母が生活していた1階部分は流失。約1カ月半、親戚の家を転々とした生活を送った。父・修一さん(50)が仕事で忙しい時は、バットとグラブをスコップに持ち替えて、黙々とがれきの片付けを続けた。特別な夏が終わり、小野寺にこみ上げてきたのは感謝の気持ちだった。

 「当たり前だったものが一瞬にして全てなくなった。でも近所の人や県外の方々の支援があったからこそこの夏を迎えられた」。スタンドで最後の夏を見届けた祖母・淑子さん(74)も「希望を与えてもらった。つらいことは全部忘れました。よく頑張った」と最愛の孫の最高の晴れ姿に涙を流した。

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2011年7月16日のニュース