専大北上高の中村主将 亡き父の“思い出”と…

[ 2011年7月14日 20:07 ]

 第93回全国高校野球選手権大会岩手大会は14日、1回戦2試合を行い、専大北上高は福岡工高を11―5で破った。専大北上高の中村晃広主将(18)は、東日本大震災で亡くなった父に買ってもらったスパイクを履き、八回に三塁打を放って勝利に貢献した。

 岩手県大槌町にあった中村選手の自宅は大津波ですべて流された。父英知さん(59)は遺体で見つかり、祖母もいまだ行方が分かっていない。

 漁師だった父は、野球をする息子が大好きで、グラブをいくつも買い与えた。母わささん(58)は「プレゼントするのがとにかく楽しみだった」と思いをはせる。だが、その思い出のグラブも津波で失った。

 被災後、わささんは一時、大槌町内の知人宅に身を寄せていたが、中村選手は「帰らない。主将の責任がある」と学校の寮を離れなかった。その言葉に母はうなずき、「今は野球だけに集中してほしい」とスタンドで祈るように見つめた。

 「自分が打つよりチームが勝てばいい」と落ち着き払う主将は、震災への思いを足元に込めている。「思い出がある。大切な道具として一緒に戦っている」。亡き父とともに甲子園を目指す。

続きを表示

2011年7月14日のニュース