逆襲の雄叫び!沢村、完投でセ新人最多タイ5勝目

[ 2011年7月10日 06:00 ]

<巨・広>8回2死、松山から三振を奪い、雄叫びをあげる沢村

セ・リーグ 巨人3―1広島

(7月9日 東京D)
 この男こそが逆襲への使者だ!巨人は9日、ルーキー・沢村拓一投手(23)が広島戦に先発。完封目前の9回に1失点したものの、自身3度目の完投で5勝目を手にした。今季の新人の勝ち星では久古(ヤクルト)に並んでトップタイ。仮に新人王獲得となれば、同一球団で4年連続は球界史上初の快挙だ。チームも連勝で広島を抜いて4位へ浮上。新人王へ、そして奇跡の大逆襲へ。今や沢村の存在は欠かすことができない。

 笑顔満開、とはいかない。悔しさは隠せない。試合後、沢村は「いろいろな方が(初完封を)期待したと思うけど、1点取られたのはまだまだという証拠です」と振り返った。9回1死から失点。それでも十分胸を張れる。3安打1失点の完投勝利。そこには成長の跡が確かに刻まれていた。

 「前回みたいにふがいない投球をすれば、チームが上昇する勢いを断ち切ってしまう」。3日の中日戦(東京ドーム)で自己最短の5回5失点KO。力みが目立つフォームで球離れが一定せず、制球も定まらない。そこで踏み切ったのが調整法の大胆な変更。ブルペン入りは7日のヤクルト戦(神宮)の試合中のみ。猛暑の中、連日70~80メートルの距離での遠投に時間を割いて大きな腕の振り、球の回転を確認した。

 その成果か、力みが抜けたフォームから内外角にきっちり投げ分けた。8回まで1安打。二塁も踏ませない。最速148キロと直球は抑え気味だったが「打者を打ち取るのが仕事。勘違いしないで抑えることに集中したい」。その直球については「切れ、速さ、強さが出ていない」と不満も、要所ではフォークが決まる。8回2死では松山から、そのフォークで8個目の三振。雄叫びを上げベンチに戻るルーキーに、女房役の阿部は「普通に戻っていた。(5失点の)前回が別人だった」。川口投手総合コーチも「中5日だとまだ試合勘がある。早いうちにリベンジしたい気持ちもあったと思う」と称えた。

 史上初の4年連続同一球団からの新人王、という快挙も現実味を帯びてきた。ヤクルト・久古に並ぶ新人トップの5勝目だが、内容では救援専門の相手を上回る。昨年11月、ファン感謝デーで原監督は「4年連続で(新人王が)出てくれれば」と話したが、開幕からローテーションを守り、チーム最多の3完投で再びリーグトップの85奪三振。ファン投票で球宴の残り1枠を選ぶ「最後の1人」へも、絶好のアピールとなる快投だった。

 しかし、もっと大きな目標がある。リーグ戦再開後、そして7月初の連勝も、まだ借金8。8日、試合前に行ったサイン会で、沢村は笑顔でペンを走らせた後に漏らした。「球場に足を運んでくれるファンに感謝しないといけない」。お立ち台から見上げるスタンドには、4万人超の大観衆。「苦しい状況かもしれないけど、野手の皆さんが早出特打ちで頑張っている姿を僕も見ている。必ず上がってくるので応援お願いします」。関東地方は梅雨も明けた。さあ逆襲へ。ナインの思いを代弁して、そう力強く誓った。

 ▼巨人・原監督(沢村について)メリハリがついていた。テンポ良く投球してくれた。

 ≪孤軍奮闘!チーム最多の完投≫ルーキーの沢村が1失点完投勝利。6月12日のオリックス戦(敗戦)以来3度目の完投になるが、セでは館山(ヤ)、能見(神)の各4度に次ぐ3位。巨人では内海の2度を抜く最多完投だ。また、交流戦後の巨人は4勝8敗2分けと低迷し、この間、6投手が先発。うち、勝ったのは沢村(2勝)だけと孤軍奮闘の力投を見せている。なお、この日の勝利で、久古(ヤ)に並ぶ新人最多の5勝目。巨人は08年から山口、松本、長野と3年連続で新人王を輩出。沢村も続き同一球団から4年連続新人王が誕生すれば、84~86年広島(小早川、川端、長冨)の3年を抜く最長記録になるがどうか?

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