意地のサヨナラ打!岩村 メジャーから2軍降格も復活打

[ 2011年6月30日 06:00 ]

<楽・ソ>10回2死一、三塁、逆転サヨナラ打を放った岩村が両手を突き上げ跳びはねる

パ・リーグ 楽天5-4ソフトバンク

(6月29日 Kスタ宮城)
 岩村コールが響き渡る。初めてKスタ宮城のお立ち台に上がったヒーローは涙をグッとこらえ、声を震わせて言った。

 「僕は泣きません。自分自身歯がゆい日が続いたけれど、きょうのこの日を信じてやってきました」。負ければ30日にも自力Vが消滅する試合。1点を追う延長10回、2死から代打・草野が内野安打で出塁した。ネクストバッターズサークルの岩村はこの日朝の「めざましテレビ」の星座占いを思い出した。自身の水瓶(みずがめ)座が1位。「いい場面で回ってくる。きっと打てる」。呪文のように唱えた。すると高須も右前打で一、三塁。運命が導いた打席に向かった。

 守護神・馬原の速球に対応するためバットを指2本分ほど短く持った。普段は小指をグリップにかける男だが、プライドは捨てた。3球目の154キロ直球。フルスイングすると打球が伸びた。左翼フェンスを直撃する逆転2点二塁打は今季初の適時打。ヤクルト時代の02年以来9年ぶりのサヨナラの味だった。

 メジャーから5年ぶりの日本復帰。だが開幕から打撃不振で5月14日に2軍落ちした。09年5月に左膝じん帯断裂。その影響から重心を残す左膝がどうしても粘れず、体が前に突っ込む。星野監督も「癖になっとる」と心配していた。約1カ月半の2軍生活で重点的に修正。球を引き付けて左手で押し込む。だから低反発の統一球でも打球は伸びた。前日に1軍復帰。ヤクルト時代からの師匠で、メールで助言を受けてきた中西太氏(78)に東京ドームで再会し「良くなっている」と言われた。「昔もそうだったけど、中西さんに言われると打てそうな気がする」と手応えをつかんだ。

 2試合目で先発復帰。2回に和田からバットを折りながら中前打を放ち、8回1死一塁ではカブレラの三遊間の打球をダイビングキャッチで併殺打にした。その時の大歓声をサヨナラ打で再び浴びた。「楽天に期待されて獲ってもらった以上、何とかして返していきたい」。人前で決して涙を見せない男は最後にこう言った。「本当は泣きたいですよ」。その目は真っ赤になっていた。

 ▼楽天・星野監督 よく押し込んだな。上がりすぎたと思ったけど意外と伸びたからな。(打撃不振で)まだまだ(チームに)借りがあるはずだから、もっと借りを返してもらわないといけないね。

 ≪9年ぶり2本目≫岩村(楽)が延長10回に逆転のサヨナラ適時二塁打。自身サヨナラ安打はヤクルト時代の02年8月9日横浜戦で9回8―8から右安打を放って以来9年ぶり2本目。延長回でのサヨナラも、逆転サヨナラもプロ入り初めてだ。また楽天の延長サヨナラ勝ちは18度目になるが、これまでは全て同点の場面からの勝ち越し。延長戦で一度リードを許し、ひっくり返したのは球団史上初めてだ。これで今季の楽天はサヨナラ試合に4勝1敗の勝率・800。ソフトバンク、ヤクルトの3勝1敗(勝率・750)を抑え、サヨナラ試合の勝率は両リーグで最も高い。

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2011年6月30日のニュース