プロ注目東洋大・藤岡男泣き 2年連続MVP&日本一

[ 2011年6月13日 06:00 ]

<東洋大・慶大>4試合すべてに登板しMVPに輝いた藤岡は、仲間に胴上げされて満面の笑み

全日本大学野球選手権決勝 東洋大3―1慶大

(6月12日 神宮)
 東洋大がサヨナラで慶大を下し、2年連続4度目の日本一に輝いた。1―1の延長10回無死一塁で小田裕也外野手(4年)が右翼へサヨナラ2ラン。1失点完投した今秋ドラフトの目玉左腕、藤岡貴裕投手(4年)は全4試合に登板して3勝を挙げ、大会初の2年連続最高殊勲選手賞を獲得した。連覇は史上5校目(7度目)。慶大はプロ注目の伊藤隼太外野手(4年)が無安打に封じられ24年ぶりの優勝を逃した。

 優勝が決まった瞬間、藤岡はベンチ裏で左足の治療を受けていた。耳に届く大歓声。小田の劇的なサヨナラ弾を見逃した左腕は「マジ!?本当に入ったんだ…」。はだしのままベンチに戻ると、本塁上で歓喜の輪をつくるチームメートの姿が目に飛び込んできた。

 「輪には入れなかったし、凄くきつかったけど、勝てて良かったです。今年は最上級生で引っ張る立場。2年連続で優勝できて凄くうれしい」

 連覇の喜びと安堵(あんど)感。3日連投ながら延長10回、今春最多となる164球を投げ抜き、完投したエースは男泣きした。疲労から腕の振りが鈍く、制球もいまひとつ。最速153キロを誇る直球は終盤、130キロ台まで落ちた。それでも気力を振り絞る。10回は左ふくらはぎがけいれん。2死から四球を許すと、自らタイムをかけた。しかしマウンドに来た高橋昭雄監督に治療を勧められても「感覚が変わるのが嫌だった。そのままいきました」。そして3番・宮本真を外角直球で見逃し三振。12個目の三振を奪うと、足の痛みにも構わずあえて走ってベンチに戻った。そんなエースの姿に打線が奮起。直後に劇的なサヨナラ劇が待っていた。

 今春はリーグ戦11試合、今大会4試合とチームの公式戦全15試合に登板。計1425球を投げた。連投を見据えて春のキャンプからスタミナ強化に着手。3日連続150球以上の投げ込みを1セットとして何度も繰り返した。加えて「いい投手は股関節が軟らかい」と故障防止のため日本ハム・ダルビッシュらの動きを研究。仮に延長11回に突入していても「投げるつもりでした」。まさに鉄腕。不断の努力が最後の最後に支えとなった。

 05年に創価大・八木(日本ハム)が記録した大会最多の49奪三振には1個及ばなかったものの、昨年に続いて文句なしの最高殊勲選手、最優秀投手。しかし、これで満足する左腕ではない。明治神宮大会での、春秋完全制覇の野望。「ここまできたら狙いたい。秋は完封できる投球をしたい」。貪欲な向上心を見せる藤岡の進撃は、まだまだ終わらない。

 ◆藤岡 貴裕(ふじおか・たかひろ)1989年(平元)7月17日、群馬県生まれの21歳。桐生一では3年春のセンバツ出場も、初戦で都城泉ケ丘(宮崎)に0―2で敗れた。東洋大では3年春に3試合連続完封を含む6勝をマーク。同年秋にも6勝を挙げた。昨夏の世界大学野球選手権ではキューバ戦に先発するなど、主力として活躍。東都大学野球リーグ通算は41試合で21勝8敗、防御率1・40。1メートル83、85キロ。左投げ左打ち。

 ▼東洋大・鈴木大主将 最後の最後まで藤岡が頑張ったので、それに応えないといけなかった。

 ▼日本ハム・斎藤 僕も大学時代の最後に(神宮大会で)優勝を味わうことができた。藤岡君と来年、プロで一緒にできることを楽しみにしています。

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2011年6月13日のニュース