富士大“恩返し”8強!東北勢最後のとりで守った

[ 2011年6月10日 06:00 ]

<富士大・近大工学部>タイブレークの延長10回1死満塁、山川(3)が四球を選び、押し出しのサヨナラ勝ちに歓喜の富士大ナイン

全日本大学選手権2回戦 富士大2-1近大工学部

(6月9日 東京D)
 三塁側ベンチからナインが飛び出し、歓喜の輪が広がった。東日本大震災による節電対策として今大会から初めて採用されたタイブレーク方式を制したのは、震災で被害を受けた富士大だった。

 延長10回1死満塁。フルカウントから山川が押し出し四球を選んでサヨナラ勝ち。東北勢最後のとりでを守っての初戦突破を、青木久典監督は感慨深げに振り返った。

 「東北、岩手のためにも夢、元気、勇気を与えられるよう全力プレーをやっていこうと。選手がよく頑張った。勝つことで助けてくれた多くの人に恩返ししたい」

 前日にノーヒットノーランを達成した近大工学部・久保田を3回に攻略して先制。4回以降は打線が沈黙し、7回に同点とされたが、投手陣が耐えた。9回から3番手で登板した河野は岩手県花巻市出身。親戚が津波で家を流される被害に遭い「岩手のためにも頑張ろうと思って投げました」。延長10回1死満塁は今春覚えたばかりのワンシームを駆使して内野ゴロ2つで切り抜けた。

 震災では今大会には登録されていない4年生部員の父が死去。合宿所は断水が続き、名古屋遠征中だったナインは、2次災害も懸念して3月下旬まで関東で調整を続けた。岩手で全体練習を再開したのは4月に入ってから。2年前に準優勝して東北の雄となったチームは、震災の影響を言い訳にすることなく、大学名のように日本一を合言葉に取り組んできた。

 東北福祉大、東日本国際大は既に敗退。3回に適時打を放ったリードオフマン佐藤弘は言った。「東北に元気を与えたい。残った自分たちが勝つことで明るい話題を届けたい」。その言葉にはナイン全員の思いがこもっている。

 ◆富士大学 1965年に学校法人奥州大として創立された私立大。国際社会に貢献する大学を目指すという理念から日本の象徴である富士山にちなみ、76年に現校名に改称。学部は経済学部のみで、経済・経営法・経営情報の3学科。野球部は創立と同時に創部。主なOBに元ロッテ・相原、広島・中村、今秋ドラフト候補の三菱重工神戸・守安らがいる。全日本大学野球選手権は過去6度出場し最高成績は09年の準優勝。サッカー部やゴルフ部、ソフトボール部など体育系部活動が盛ん。07年7月には照明設備も完成(野球場、サッカー場、ソフトボール場)。所在地は岩手県花巻市下根子450の3。

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2011年6月10日のニュース