記録よりも勝利を優先する男 いずれ訪れる日が来ただけだ

[ 2011年4月16日 09:09 ]

セ・リーグ 阪神5―4中日

(4月15日 ナゴヤD)
 【記者の目】金本の連続試合出場は予想外の形で止まった。先発を外れ、一塁走者の二盗憤死で打席は完了せず、守りにもつかなかったため、公認野球規則の連続規定を満たさなかった。試合に「出場」はしたが、「連続記録」は途切れたわけである。

 試合後、首脳陣は一様に俊介が独断で走った行為を疑問視した。首脳陣は金本の記録継続を考えていたのだ。ならば俊介に「走るな」と指示を出しておくべきだった。2年目の若手に責任を負わせるのはあまりに酷だ。

 俊足の俊介のことだ。盗塁は「行けたら行け」と常に「青信号」のはずだ。「走るな」という赤信号のサインはある。

 小差リードの8回だ。2死一塁。次の1点は非常に大きい。走っていいケースである。「行ける」と踏んで試みた二盗は間違ってはいない。

 また既に、金本の記録に、こだわりはなかったはずだ。金本は昨年4月18日、連続イニング出場を止める先発落ちを自ら申し出ている。野球はもともと、個人記録を争う競技ではない。チームの勝利のために個人がある。この前提を最も理解し、実践しているのが金本だ。今季も真弓監督が直接、金本と話し合い「勝利のための用兵」を確認している。金本も勝敗とは無縁の記録が話題となるのは本意ではなかろう。

 1998年7月10日から続くという偉大な記録に大いなる敬意を払いながら、あえて書いておきたい。いずれ訪れる日が来ただけだ。記録が止まってもいいではないか。

 ルー・ゲーリッグも衣笠祥雄もカル・リプケンも、鉄人たちは皆、連続出場の間、孤独と苦悩のなかにいた。彼らが偉大だったのは休んだ後も、変わらぬ姿勢でいたことだ。むろん、金本も同じだろう。 (編集委員・内田 雅也)

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2011年4月16日のニュース