イチロー新たな“勲章”も…「どうでもいいね」

[ 2011年4月16日 06:00 ]

5回、中前打を放つイチロー

ア・リーグ マリナーズ1―5ロイヤルズ

(4月14日 カンザスシティー)
 マリナーズのイチロー外野手(37)が14日(日本時間15日)、敵地球場の歴史にも名を刻んだ。ロイヤルズ戦で4打数2安打。ロ軍の本拠地であるカウフマン・スタジアムでの連続試合マルチ安打を9に伸ばし、ロ軍史上最高打者として通算3154安打で米野球殿堂入りしているジョージ・ブレット氏(57=球団取締役)が持つ同球場での最長記録に並んだ。こんなマニアックな記録が取り上げられるのも、数々の記録を塗り替え続けるイチローだからこそだ。
【試合結果】

 シアトルからはるか2417キロ離れたカンザスシティーの英雄に並んだ。ただ、イチローにさしたる感慨はなかった。

 「どうでもいいね。(相手の)選手も知らないでしょ、そんなこと。広報の人とかなら知ってるんだろうけど…。(気持ちの良さは)全然ない。だって、僕も知らないんだもん」

 チームが完敗したこともあってか、どこまでも冷めた口調。それでも、記録は記録だ。3回、センター返しした打球がワンバウンドで先発・チェンの頭上を越えて遊撃内野安打。着地時に腰を痛めるほど思い切りジャンプした左腕は「チッ、してやられたよ。捕ってやろうと思ったのに、いいところへ打ちやがって」と悔しがった。5回には初球の真ん中低めのカーブを狙い澄ましたように中前に運んだ。

 この時点で、ロ軍一筋で現役生活を送り、球団史上最高打者であるブレットが79年に記録したカウフマン・スタジアム最長の9試合連続マルチ安打を悠々と達成した。イチローにとっては09年5月から3シーズンがかりでの到達。ロ軍との対戦打率はア・リーグ13球団中、2番目に高い・381。地区が違うことで対戦試合が少ない中で、抜群の相性を誇っている。

 他球団の選手にホームで好き放題にやられ、就任6年目のロ軍のボブ・マクルア投手コーチも頭を抱えた。「ウチの投手陣では歯が立たない。誰かのところ(正面)に飛んでくれることを祈るだけ。まさに(8度の首位打者を獲得した安打製造機の)トニー・グウィンのようだ。球を散らして、緩急をつける繰り返ししかない」。この日もロ軍投手陣は一貫して真っすぐは見せ球にして、変化球勝負。追い込んでも三振を狙わない。チェンも内角高めに直球を配し、外角へのスローカーブでひたすら打ち損じを待ったが通用しなかった。

 同球場で、イチローは06、08年にシーズン200安打を達成。さらに、目下15試合連続安打も継続中で、まるで敵地を感じさせない活躍。それでも、昨季に同球場との相性について「全然、感触的には何もないけどね」と事もなげに話したイチロー。甘いマスクと卓越した野球センスで、ブレットは「ゴージャス・ジョージ」との愛称で呼ばれたが、進化を止めないイチローだってゴージャス。10年連続シーズン200安打など数々の大記録の陰で、イチローが望む望まないにかかわらず、レアでマニアックな記録も増えていく。

 ◆ジョージ・ブレット(GEORGE HOWARD BRETT)1953年5月15日、米ウエストバージニア州生まれの57歳。73年にドラフト2巡目でロイヤルズ入団し、主に三塁手として活躍。93年に引退するまで21年間ロ軍一筋でプレーした。79年5月1日レンジャーズ戦から同28日オリオールズ戦まで本拠地・ロイヤルズスタジアム(現カウフマン・スタジアム)で9試合連続複数安打。首位打者に3度輝き、80年には打率・390でア・リーグMVPと2冠。通算2707試合で3154安打、打率・305、317本塁打、1595打点。99年に野球殿堂入りした。

 【イチローのレア記録】
 ☆三振なし オリックス時代の97年、4月16日ロッテ戦から6月25日の日本ハム戦まで216打席連続無三振のプロ野球記録を樹立。78年藤田平(阪神)の208打席連続を破った。

 ☆1953本目で初 09年7月28日ブルージェイズ戦で、同点の9回に中前へサヨナラ打。1952安打しながらサヨナラ打がなかったのは、コーラ(メッツ)の742安打を大きく引き離して当時の現役最長だった。

 ☆連休なし 08年8月13日エンゼルス戦、同15日ツインズ戦で記録して以来09年9月26、27日ブルージェイズ戦まで、連続試合無安打がなかった。この間の出場は180試合で、ワーナー(パイレーツ)の198(1928~29年)、クレーマー(フィラデルフィア=現アスレチックス)の191に次ぐ史上3位。

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2011年4月16日のニュース