勇気と希望を甲子園から…東北“がんばっぺ”

[ 2011年3月21日 06:00 ]

甲子園練習前、整列して黙とうする東北ナイン

 がんばっぺ、東北!第83回選抜高校野球大会(日本高校野球連盟、毎日新聞社主催)に出場する東北(宮城)が20日、甲子園練習を行った。地元・仙台が東日本大震災で甚大な被害を受けたため、グラウンドで本格的に練習するのは地震が発生した11日以来。選手はその感触を確かめながら懸命にボールを追い、午後には久々の実戦となる練習試合を行った。また、同じく被災地である青森県八戸市の光星学院も甲子園練習に汗を流した。

【組み合わせ 日程】

 黒土の上を駆けるこの1歩を、春風の中で追うこの1球を、東北ナインは信じて待っていた。

 「やっぱり甲子園は球児の夢。憧れのグラウンドでプレーできた喜びを感じます」。大阪入りした前夜は疲労の色を深くにじませていた五十嵐征彦監督が、晴れやかな表情でノックバットを握る。ナインの大きな声が、聖地の空にこだました。

 グラウンドで白球を追うのは、未曽有の大震災に襲われた11日以来だ。午前10時。ナインはまずベンチ前に全員で整列すると、真っ先に震災の犠牲者の冥福を祈って黙とうをささげた。「今も被災地では生きているかどうかも分からない人がいる。与えられた環境を幸せと思う」と上村主将。多くの人の生活が、人生が一変してしまったあの日以来、食事の前にも必ず祈りをささげてきた。もちろん甲子園でも。選手全員で話し合って、練習前に必ず行おうと決めた。そして一斉にグラウンドへ。縦じまのユニホーム姿の背中を押すかのように、スタンドのファンからは自然と大きな拍手がわき起こった。

 絶え間ない余震と停電に、一時は野球部寮から避難。選手は給水ボランティアなどを行いながらも、バットは手放さなかった。断水で水分補給ができないため、汗をかくことができない。それでも停電で真っ暗な中で素振りを続けた。この日は予定の30分間のうち、17分間を打撃練習に費やし、小川は左翼席に柵越えを放った。「野球をやっている場合じゃないとも思った。でも仙台を出発する時に、被災者の方から“私たちを明るく元気にしてね”と言われた。やっぱり(野球は)気持ちいい」。28日の試合を前に一足早く故郷に送る希望のアーチだった。

 エース・上村も投球練習は震災後初めて。ボールは高めに浮いたが「今はコンディションとか言っていられない。いろんな人の思いが詰まった甲子園。今できる最高のパフォーマンスを見せたい」と、何より野球ができる喜びをかみしめた。

 「今も必死で生きようとしている人のことを忘れず、全国が送ってくれる声援を感じて全力でプレーしたい」。表情を引き締めた五十嵐監督は「気持ちはあちら(被災地)にある」ときっぱりと言った。大会スローガン「がんばろう!日本」は、宮城で言うなら「がんばっぺ!東北」。被災地に勇気と希望の灯を。それが東北ナインの使命だ。 

 ≪交通網復旧せず…応援団は厳しく≫東北の応援団は、現時点では大会6日目(28日)の大垣日大との初戦に駆けつけられる予定が立っていない。大震災の影響で交通網がまだ復旧しておらず、当日のアルプススタンドは部員や家族らの応援だけとなりそうだ。河西利明部長は「大阪にいるOBや県人会の方たちは来てくれるでしょうが…。少数の応援になるかもしれません」と話していた。

 ▼日本ハム・ダルビッシュ(東北OB)出場できて良かった。頑張ってほしいですね。

 ▼楽天・星野監督 センバツはやった方がいい。高校生は地域の代表として勇気を与えることができる。大人から見れば、高校生は子供。子供が頑張る姿は勇気を与える。東北高校はプレッシャーもあるだろうけれど、何とか勝ち進んでほしい。

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2011年3月21日のニュース