「大当たり」外れの外れの外れ1位 駿太はイチローになれるのか?

[ 2011年3月5日 09:21 ]

ほっともっとフィールド神戸でダッシュを繰り返す駿太

 オリックスにイチローの再来を予感させる選手が出現した。5日に18歳の誕生日を迎えるドラフト1位・駿太外野手(前橋商)だ。群馬県出身で高校時代に「上州のイチロー」と呼ばれた高卒ルーキーは、キャンプ序盤に1軍昇格すると、実戦に入っても打率・325。イチローでもなし得なかった高卒新人外野手として59年の張本勲(東映、スポニチ本紙評論家)以来、52年ぶりの開幕スタメンを狙う。駿太はイチローになれるのか。本家に相通じる打撃センスに迫ってみた。

 光る原石どころか、駿太が強烈な輝きを放ち続けている。昨秋ドラフトで早大・大石、東海大・伊志嶺、履正社・山田の交渉権を引き当てられなかった岡田監督も「あの子は別格。こんな高校生見たことがない」と、外れの外れの外れ1位の「大当たり」にニンマリ。指揮官も絶賛する打撃センスはイチローに相通じる3つの要素があった。

 (1)ブレない軸

 練習中のことだった。駿太は左足1本で立つと、右足を前後に大きく揺さぶって素振りを繰り返した。その間、体は少しもよろめくことはなかった。

 「僕が一番大切にしていること。片足でも打てるイメージで打席に入ってますから」。かつてイチローはオリックス時代に振り子打法でブレーク。右足を後方に振り、体を投手側にスライドさせながら右足を踏み込んで打った。当然目線が動きやすくなるが、体の軸がブレないから目線も一定。だから的確にボールをとらえることができた。体のバランスが優れ、強さも備わっていたからできる芸当で駿太も同じだ。打席では右足を少し後ろに引きながら上げてタイミングをとる。正田打撃コーチは「軸がしっかりしているから、体勢を崩されてもボールをとらえられる」と話した。

 (2)フラット打法

 イチローやヤクルトの青木らヒットメーカーに多く見られるスイング軌道を駿太も実践している。「体の後ろからバットを水平に出して、最後に振り上げるイメージでやってます」。以前は最短距離でバットを出すために上から叩くダウンスイングが主流だったが、ボールに対して「点」でしか捉えられない。バットを水平に振れば「線」で捉えるからボールに対応できる幅は広がる。その前提にあるのがグリップを最後まで後ろに残して体の開きを防ぐこと。イチローが打席前に行うゴルフスイングはそのためであり、駿太も「意識はない」と言うが、全く同じ行為をやっている。プロの速球に差し込まれても体の後方で打ち返し、逆方向に強い打球を打てる。体が開かないから左腕も苦にしない。特に外角球の対応に優れており、イチローやソフトバンク・川崎を指導した新井2軍監督は「外角の球をあれだけしっかり打てる能力は川崎の比じゃない。イチローでも外角の球をあんなには打てなかった。僕が見た中では一番の才能」と力説する。

 (3)変化球への対応

 プロに入った新人が最も戸惑うのは変化球の鋭い切れ。特に追い込まれた場合はどんな一流打者でも変化球のボール球を振らされる。振り遅れての三振を避けるため、一番速い球にタイミングを合わせるからだ。しかし、駿太はイチロー的思考だった。「追い込まれたら6割変化球、直球4割ぐらいで待ってます。だってストライクゾーンに直球は投げてこない。変化球を待っていればボール球も見極められますから」。イチローは追い込まれると変化球を重視。仮に直球が来ても逆方向に打ち返したり、カットする。駿太もそれができるから追い込まれても慌てるそぶりがない。同じ左の強打者である先輩の後藤は「スイング自体はまだまだだけど、対応力が凄い。追い込まれてもバットに当ててヒットにしてしまう」と評した。

 まだ一流打者と比較すればスイングスピードで劣り、一線級の速球、特に内角球に苦しむだろう。だが、それを差し引いて余りある打撃力が18歳にして備わっており、結果を残している。正田コーチは言う。「イチローのようになれるかは分からない。でも天性のものを持っている。あとは努力次第」。駿太はイチローの再来を予感させる本物の力を持っている。

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