元は下手だったひちょり バントの極意は幅4センチと鼻歌

[ 2011年2月24日 13:16 ]

バント練習に励む森本

 鼻歌交じりで投手の前に――。横浜・森本稀哲外野手(30)のバントの極意は「下手の工夫」にあった。09年には成功率100%、昨年にもパ・リーグ史上3人目の50犠打(55犠打)を記録したバントのスペシャリスト。その隠れた技とは?

 マシン相手のバント練習。森本はバットのある一部分に当てることだけに集中する。狙うのは投手の前だ。ただそれだけでボールは測ったように投手とホームの真ん中に転がって止まる。

 「僕はもともとバントが下手くそなんですよ。今でも下手ですね。だから下手は下手なりに考えてやるしかなかった」

 下手の工夫。その一つが打球を殺すバットのスイートスポットだ。バットの芯と先端のちょうど真ん中付近。芯では強すぎるし、先っぽだと弱すぎる。幅約4センチほどの部分が「最も殺せる」のだという。日本ハムで俊足の1番打者として頭角を現した森本が、バントの責務を負ったのが2番を任された08年。「下手だからなんて言ってられない」。連日マシン相手にボールを転がしているうちに「衝撃が心地いい部分がある」ことに気がついた。バント用スイートスポットだった。

 ただし、これだけで43犠打の09年に樹立したバント成功率100%は成し得ない。「心と頭の準備が必要なんです」。その準備とは、余計なことを考えず「ここ(スイートスポット)に当てて投手の前に転がす」。これだけに集中する。変化球が来たら、ボール球だったら、一塁方向か、三塁方向か…そんな心の迷いがミスを呼ぶ。投前は強くても弱くても失敗する危険ゾーン。ただ、しっかり殺せば失敗しないことは森本自身が過去2年で証明している。

 「終盤の無死二塁なんて究極の緊張感に襲われる。だから、打席に入るまでに心と頭の準備をして、あとは一発で決める覚悟。打席の中では鼻歌を歌いながら投手の前に転がせばいい」。飛ばない統一球でバントが重視される今季。ひちょりの鼻歌が聞こえたら走者は確実に進塁する。

 ≪09年にはパ史上初の快挙≫森本(横)は日本ハム時代に通算165犠打を記録。失敗は23度と少なく、成功率は・879に達した。特に09年は送りバントを45度試み、犠打43、バント安打2とオール成功。シーズン40犠打以上で失敗なしは95年川相(巨)に次いで2人目。パでは史上初の快挙だった。また昨年は自己最多の55犠打をマーク。パでは07年田中賢(日)の58犠打に次ぐリーグ2位の数字を残した。

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