えっ、イチロー 実は「打率」1割台!?それでも量産のワケ

[ 2011年2月10日 07:03 ]

 日本が誇る天才打者の「打率」は実は1割台だった。大リーグは今月中旬から続々とキャンプインする。そこで、昨季世界一となったジャイアンツを含む13球団にスカウティング・リポートを提供し、スポニチも契約している「インサイド・エッジ社」(以下イ社)のデータを通じて、イチローを徹底解剖してみた。

 イチローが毎年200安打を打てる秘密はどこにあるのか。ヒントとなるデータとして、イ社独自の指標「Well Hit率(WH率)」がある。「Well Hit」とは、芯でとらえた打球のこと。一般的な打率では、詰まった安打も会心の安打も同じ1本として計算される。しかし、アウトになった打球でも芯でとらえながら正面を突いたり、相手の好守に阻まれたものもある。つまり、WH率とは、結果に関係なく、バットの芯に当たった確率を示す数値。イ社の専門スタッフの目で、打球1球1球ごとに分別されている。

 普通は好打者であるほど、芯に当たる確率が高いと考えるのが常識。ところがイチローの場合、このWH率がわずか・138しかない。昨季大リーグ2位の200安打を放ったカノ(ヤンキース)、197安打で3位のゴンザレス(ロッキーズ)は、ともに2割台後半。イチローは2人より1割以上も低く、打球の大部分がバットの芯を外れている計算になる。

 それにもかかわらず、なぜ安打を量産できるのか。ここでイ社が用いるもう一つの指標「ゴロ率」を見る。「ゴロ÷(ゴロ+飛球)」で計算される数値で、イチローは58%。カノの44%、ゴンザレスの40%に比べて高い。高低どちらがいいかは一概に言えないが、飛球は捕球されれば終わりだが、転がった打球なら内野安打になる可能性も生まれる。俊足のイチローはなおさらだ。球種別のWH率を見ても、どの球種も低いのに打率は3割以上。「打ち損じ=凡打」とはならないのだ。

 実際にイチローは、相手投手や守備位置によって意図的に芯を外し、詰まらせる場合もある。打球をただ強く叩くのではなく、自由自在に操る能力。それが最大の強みであるといえる。

 ◆インサイド・エッジ(Inside Edge)社 現在も共同経営者であるランディ・イストレー氏(61)とジェイ・ドンチェッツ氏(52)が1984年に設立。本社はミネソタ州ミネアポリス。大リーグ球団では93年にブルワーズが採用したのが最初。96年にヤンキースが同社のリポート採用球団として初の世界一となる。約30人のスカウトを含め従業員は50人以上。

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2011年2月10日のニュース