ダル強行先発6回2失点「一世一代の投球できた」

[ 2009年11月2日 06:00 ]

<日・巨>5回2死満塁、小笠原道大から三振を奪いガッツポーズするダルビッシュ有

 【日本ハム4―2巨人】手負いでもエースはエースだ。日本シリーズ第2戦は1日、札幌ドームで行われ、日本ハムは左腰、左臀(でん)部痛で1カ月以上も戦列を離れていたダルビッシュ有投手(23)が強行先発した。42日ぶりの復帰マウンドで、自ら“一世一代”と評した投球を披露。球速100キロ前後のカーブを多投して6回87球、2失点で切り抜けた。これで1勝1敗のタイとなり、第3戦は3日午後6時から巨人の本拠地、東京ドームで行われる。

 大歓声の中でのお立ち台。「今の状態では出来過ぎ以上。一世一代の投球ができた」とうっすらと目を潤ませていたダルビッシュが、ロッカー裏での取材で少しだけほおを膨らませた。「せっかくびっくりさせようとしたのに…」。極秘に進めてきた“サプライズ復帰”が前日に漏れたことを悔しがった。それでもファンは半信半疑。試合前、ダルビッシュの先発を告げるアナウンスが流れると、球場の雰囲気は一変した。
 「逆に巨人は混乱したかな?いざ、出てきてもあんなヘロヘロの球しか投げられないし…」。左腰、左臀部痛で今季中の登板が絶望視されていた中でのマウンド。9月20日のオリックス戦以来42日ぶりの実戦は“見切り発車”に近かった。全球種を交えての本格的な投球練習再開はほんの3日前。それでもエースはエースだった。
 「腰を使わずに手だけで投げた」。踏み出す側の故障だけに、下半身を使う際には力をセーブせざるを得ない。このため、歩幅を狭めて上体に頼るフォームで投げた。その姿は“立ち投げ”のようだった。「ストライクが入るのか」、「打者の狙い球など察知能力が低下しているのでは…」。尽きない不安。しかし最後は「なるようにしかならない」と自分に言い聞かせた。
 2回には149キロを計測したものの、直球の大半は140キロ台中盤。ただ、力でねじ伏せられなくても、打者を仕留めるすべを持っていた。この日の正午すぎのことだった。「この状態で、どうやったら巨人を抑えられるか考えていたら、(西武の)岸さんがカーブで抑えていたと思い出した」。急いでパソコンを立ち上げると、動画共有サイト「YouTube」で昨年の日本シリーズの映像を目に焼き付けた。岸は第4戦で落差の大きいカーブを軸に完封。中2日の第6戦でも救援で立ちはだかった。直球に強く、縦の変化を苦手とする巨人打線。岸が手玉に取る姿に、「これでいこう」と思ったという。
 6月6日の巨人戦では全121球のうちわずか9球しか投げなかったカーブを、この日は19球と多投した。2回無死二塁から亀井、谷をカーブで連続三振。5回2死満塁でも、小笠原をスライダーで三振に仕留める前にカーブを挟んだ。カーブは100キロ前後。球威の不足分を緩急で補い、「相手が嫌がっていたし、有効だった」としてやったりの表情を浮かべた。
 CSで先発の2日後に志願して救援登板した楽天・岩隈の姿を目の当たりにして、「泣きそうになった。あれで“やらないかん”と思った。投げるかどうか最後の一押しになった」と振り返った。これでシリーズは1勝1敗。「もちろん最後(第7戦)もいくつもり。中継ぎでも何でも投げる」。3年ぶりの日本一へ、エースは残った力をすべて絞り出す。

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2009年11月2日のニュース