魂の17球でジョニーの勇姿焼き付けた

[ 2008年3月16日 06:00 ]

<ロッテ・楽天>引退セレモニーの黒木(右)は、長女・芽依ちゃん(左)と次女・花菜ちゃんから花束を贈られる

 【ロッテ1―4楽天】ファンが、チームメートが、そしてジョニーが泣いた。昨季限りで現役を引退した元ロッテ投手、黒木知宏氏(34)の引退セレモニーが15日、千葉マリンでロッテ―楽天戦後に行われた。背番号54の最後の雄姿を見届けようと超満員の2万8926人が来場。サブローらとの真剣勝負17球にスタンドが揺れた。ファンに愛された魂のエースは、ジョニーコールに包まれてユニホームを脱いだ。

 試合が終わっても席を立つ観客はいなかった。右翼席のロッテファンは総立ちのまま。楽天ファンもジョニーコールを送る。黒木氏がしるした数々の名勝負をマリンビジョンで放映後、背番号54が姿を現すとスタンド全体から温かく、別れを惜しむ拍手が起こった。
 「これだけのファンの前で投げられて本当に幸せ。今までと変わらず、素晴らしいジョニーコールでした。今も記憶にしっかり残っています」
 前売り券2万5000枚は完売。当日券も発売開始10分で売り切れ、500人以上が球場に入れないというオープン戦では前代未聞の熱狂ぶり。「お前がいたから今がある」「永久血番54」などの横断幕も並ぶ中、バックにチームメートを従え、打席には元同僚のサブローを迎えた。「ホームランを打って引導を渡します」と話していた同期入団の4番を空振り三振に仕留めると、親友の楽天・礒部は三ゴロ。最後は弟分の福浦をこん身の137キロ直球で空振り三振だ。最後の力を振り絞った真剣勝負。魂の17球を投げ終えると天を見上げて目を閉じた。「気持ち良かった。アスリートの感覚が残っているのかユニホームを着ると気持ちが引き締まる。持っているもの以上の球を投げられました」
 ファンへのあいさつ、小宮山らからの花束贈呈。そして2人の愛娘から花束を受け取ると、もう涙をこらえきれなくなった。右翼席の前で3度の胴上げ。バレンタイン監督、泣きじゃくる小野らと熱い抱擁。愛し愛され続けた男は、汗と涙と思い出が詰まったグラウンドに別れを告げた。
 昨年12月12日の引退表明直後、球団からフロント入りを打診されたが、今後は解説者として野球の魅力を伝えつつ、野球教室などで振興に努める。「野球人・黒木はこれからもずっと生き続ける。野球人として第2のステージです」。さよならじゃない。またいつか、ジョニーはグラウンドに笑って帰ってくる。

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2008年3月16日のニュース